1500万年後のあの場所で君とまた出会いたい


 彼は少し遠くを見つめるように、空を見ていた。


「羽琉は、……その幼馴染にどこか似てる。何かを諦めたような、でも抱えきれないほどの優しさを心いっぱいに纏っている。そんな感じが、するんだ」

「…私はそんなに、立派じゃないよ」


 胸の奥が、心の奥が大きく揺れた。私はその幼馴染に似ているのか。その子のように彼を包み込んであげられるほどの優しさを持つことが出来ているのか。そして───、

 私のようにその子は何かを諦めていたのか。

 なぜだ、なんで、どうして───。なぜ彼が側にいたのに何かを諦めてしまう気持ちになってしまうのか。ただの抜け殻だった私は彼に出会って、一緒にいる時、“いつ死んでも構わない”という諦めの気持ちから“彼と生きていたい”という前向きな気持ちに変わったというのに。

 彼と見る夕日が美しいと思った。夜が怖くなくなった。朝が来ることが好きになった。そして、私は100万回生きて初めて、人に恋することを知った。

 彼が好きだ。蒼佑が好きだ。

 いつからだろう。多分最初に出会ったあの日から、私の心は動き始めていたんだ。彼の優しさに、彼の自由さに、彼の強さにいつの間にか救われていた。


「蒼佑、私、好き……。蒼佑のことが、好きだよ」


 涙混じりの情けない声で精一杯伝えた。

 蒼佑の瞳孔が大きく開いた。驚いていた。刹那、蒼佑の目から透明な雫が流れ落ちた。

 その涙は次から次へと、蒼佑の頬を濡らしていく。そして蒼佑は声を震わせながら、こう告げた。


「俺も、……俺も羽琉のことが好きだ。ずっとずっと好きだった」


 震える声を、震える体を、私は力一杯抱き締めいていた。なぜだろう、どうしようもなく蒼佑を抱き締めたのは。蒼佑の腕が私の背中に回る。初めてのハグは涙と震えの混じった切なくて優しいものだった。

 蒼佑が私を力強く抱き締める。蒼佑の口から吐息が零れた。二人の心臓の音が心地良くリズムを刻む。

 刹那、─────

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