愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
朝陽が勤める〝アカフジソリューションズ・テクノロジー〟はアカフジ電機のグループ会社だ。

立派な自社ビルを持っていても、本社の巨大ビルに比べたらちっぽけに思える。

従業員数は三百五十人で、本社の百分の一ほどだ。

しかし朝陽が専務取締役として経営に参画した三年前から業績は右肩上がりで、昨年の売上高は本社を抜かしたグループ会社の中で三位につけた。

身内だけでなく経済界からも注目されており、たった三年でここまで成長させられたことは朝陽の自信になっていた。

(この会社で満足している。今は)

ガラス扉を開けて中に入り、細い通路を進んだ先にあるエレベーターに乗る。

地下一階からは朝陽しか乗らなかったが、一階で止まり扉が開くと数人の社員がエレベーターを待っていた。

先頭にいた同年代の男性社員が乗り込もうとして朝陽に気づき、慌てて下がった。

「藤江専務、おはようございます」

「おはよう。皆さん、どうぞ」

乗りやすいよう声をかけたのに、揃って遠慮される。

(まぁ、同乗したくない気持ちはわかる。怖い存在だからな)

朝陽が専務となってから首を切った社員が十人以上いる。

< 181 / 282 >

この作品をシェア

pagetop