愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「はい。私とお母様の板挟みになってつらい思いをされているんじゃないかと。お母様に認めてもらえるよう私が努力しなければと思うのですが、なにをすればいいでしょう?」

失礼な電話に怒るのでも不安になるのでもなく、夫が苦しんでいるのではないかと心配したようだ。

自分が動いて解決しなければとまで考えてくれて、ひたむきな妻の愛情を感じて朝陽の胸が震えた。

たまらず腕の力を強め、シャンプーの香りがする妻の黒髪に鼻先を埋めた。

「うまく調整役になれない駄目な夫を心配してくれるとは、成美は優しいな。ありがとう。だが成美が頑張る必要はない。二度と不愉快な電話がこないよう、実家と母の携帯番号は拒否設定にしておく。母の方から折れて俺たちの結婚を認めるまではかかわらなくていい」

「で、でも――」

「俺の方の家族はいないものと思ってくれていいから。そうだ、美味しいフグ料理の店があるんだ。今度、成美の両親と俺たちで食事に行こう。都合を聞いておいてくれないか?」

「はい……」

不服そうな声なので、妻は夫のためになにかしたかったのだろう。

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