愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
『それと、近いうちに息子と別れてくださる? 朝陽にお見合いの話が五件もあるのよ。皆、しっかりしたお宅の素晴らしいお嬢さんだわ。結婚するまで私に挨拶にも来なかったあなたとは大違い』

『えっ? あ、あの、お母様――』

『そういうことだから、よろしくね』

電話の内容を聞いた朝陽は、申し訳なさに妻を抱きしめた。

「すまなかった」

きっと強い不安を感じただろうと思ったのに、意外にも妻の声はしっかりしていた。

「どうして謝るんですか? お見合いのお話は断ってくれたんですよね?」

「もちろんだ」

「ありがとうございます。たとえお母様の頼みでも、朝陽さんなら絶対に断ってくれると信じていました。ですから心配していないです」

腕の力を緩めて妻の顔を見ると、自然な笑みを浮かべていた。

深い愛情は妻にしっかりと伝わっていたようで、朝陽はホッと息をついた。

しかし直後に妻の眉尻が下がる。

「お母様には最初から結婚に反対されていたので、それについて改めてショックを受けることはないんですけど……朝陽さんは大丈夫ですか?」

「俺?」

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