愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「朝陽さん、ごめんなさい」

深々と頭を下げれば、背中にスーツのジャケットがかけられた。

「袖を通して着てくれ。体を冷やしてはいけない」

その声に優しさを感じ、顔を上げると、朝陽は怒りを解いた顔で嘆息している。

ベンチに座るように言われ、並んで腰かけた。

「突然、菓子折り持って押しかけてきたとも母が言っていたな。どうしてひとりで勝手に会いに行ったんだ? 関わらなくていいと言ってるだろ」

それについては後悔していないので、成美は夫の目をまっすぐに見返した。

「朝陽さんは悩んでいますよね? 私とお母様の板挟みで苦しむ朝陽さんを見るのが、私もつらいです。守られるばかりでなく、私もあなたの力になりたい。お腹のこの子も、お母様を含めた家族みんなに祝福されて生まれてきてほしいんです」

もっと頼ってほしかった。

夫婦で困難に立ち向かおうと言ってほしかった。

けれども夫は困り顔で首を横に振る。

「気持ちは嬉しいが母にかかわれば君が傷つく。今後は心配かけないように気をつけるから、いつか認めてくれるまで静かに待っていてくれないか?」

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