愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「いつかなんて悠長なこと言わないでください。私はすぐにでも朝陽さんを悩みから解放したいんです。勝手に会いにいったのは申し訳ないと思っています。でもお母様について聞いてもあなたは話してくれない。夫婦なんですから相談してほしいです。私はそんなに頼りないでしょうか?」

夫の腕を掴み切実な気持ちで訴えかけると、驚いたような顔をされた。

「成美……」

か弱い妻だと思われていたのかもしれないが、言うべき時には主張する。

それは以前から変わらない性格だ。

朝陽は空を仰ぎ、迷っているかのように黙り込む。

端整な横顔を見つめてじっと待つこと数分して、夫が川面に視線を止めて話しだした。

「成美は強いんだな。夫として守らねばという思いが先行し、君の気持ちを汲めず申し訳ない。これからはどんな悩みも相談すると約束しよう。俺の母は――」

母親の精神的な不安定さは、結婚の挨拶をしに行くにあたって教えてもらっていたが、自殺未遂や朝陽への強い執着については知らなかったので驚いた。

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