愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す

明かりに照らされたエメラルドが輝いてくれなかったら気づけなかったので、このネックレスが持ち主のもとに帰りたがっているように感じた。

「見つかってよかった……」

心底ほっとして大きく息をつく。

隣に立つ朝陽はネックレスを真顔で凝視しており、喜んでいないように見えた。

それに不満を感じて夫の間違いを指摘する。

「たかがネックレスではないです。お母様は必死に探していらっしゃいました。なくしてものすごくショックだから、あえてそういう言い方でなんとか諦めようとしたのだと思います。お母様の性格は朝陽さんの方が知っているでしょう？　私のことまで心配してくださって、根はお優しい方のように感じました」

朝陽が切なげに顔をしかめ、深く頷いた。

「旧家で生まれた母はお嬢様と呼ばれて育ち、わがままなところがある。だが家族を愛して尽くす優しさもある」

体にいいものを子供に食べさせたいとおやつはいつも母の手作りで、科学館や博物館、水族館に人形劇など、幼少期の朝陽と兄をあちこちに連れていってくれたそうだ。

通いの家政婦がいても、子供の世話を任せなかったという。