愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
もう少しだけ、この遊歩道沿いだけでも探したいと言おうとしたら、川の方から急に賑やかな声がした。

見ると屋形船がゆっくりと航行しており、提灯の連なる窓辺に大勢の宴会客の姿が見えた。

船全体を輝かせるような窓明かりを眩しく感じたら、数メートル先のテラスの欄干でなにか小さなものがキラリと光った。

「朝陽さん、あれはなんでしょう?」

「ん? 屋形船だろ」

「違います。そこの欄干に一瞬だけ、小さな緑の光が見えたんです。ほら、また。あれって……もしかして!?」

思わず勢いよく立ち上がり、欄干に向けて駆け出した。

慌てて後を追ってきた夫に叱られる。

「走るな。頼むからもっと体を気遣って――」

「あった……ありました! お母様のエメラルドのネックレスは、これですよね?」

欄干に引っかかっているネックレスをそっと指でつまんで、手のひらにのせた。

留め具が壊れているが、プラチナチェーンやペンダントトップに破損はないようだ。

三往復しても気づかなかったのは、地面ばかり見て探していたせいだろう。

ここにあったということは、友人とお喋りしながら川を眺めていたのかもしれない。

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