愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
聞きたくても、夫が思いつめたような険しい顔をしているから声をかけられない。

ひんやりと湿った夜風が川の方から吹きつけて、成美はくしゃみをする。

それでハッと我に返った夫が、慌てて成美の肩を抱いて歩き出した。

「急いで帰って風呂で体を温めるんだ」

「お母様が待っています。ネックレスをすぐにお届けした方がいいと思うんです」

「見つかったと俺から連絡を入れるよ。きっと今夜は安心して眠れるだろう。届ける前にひとつやらねばならないことがあるんだ。それをしてから、週末に一緒に届けにいこう」

朝陽の目に決意と頼もしさがにじんでいる。

なにか考えがあるのだろうと夫を信じ、成美は黙って頷いた。



それから三日が経った日曜日に、成美はネックレスを届けるために朝陽と一緒に夫の実家を訪ねた。

玄関の上がり框で出迎えた母親は今日もきれいに和服を着こなし、相変わらずの刺々しい態度だ。

成美と視線を合わせようとしないので朝陽がひと言お礼を言うよう促すと、フンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

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