愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「探してちょうだいと頼んだ覚えはないわ。まったくお節介ね。見つけたからといって、藤江家の嫁だと認めるつもりもありません」

「そんな失礼な言い方はないだろ。成美は四時間近くも歩き回ったんだぞ」

「朝陽さん、見つけてお返しできたら、それだけで私は嬉しいので……」

一昨日、ジュエリーショップでネックレスの壊れた留め具を直してもらった。

チェーンとペンダントトップは磨いてもらい、エメラルドの深い緑色がさらに美しく見える。

ビロード張りの細長いケースに入れてもらったネックレスをバッグから取り出し、両手で差し出すと、母親が奪うように受け取った。

すぐに蓋を開けて中を確かめ、ホッとしたように表情を緩める。

指先を軽くエメラルドに触れ、目を細めて微笑んだ。

(お母様が嬉しそう。見つかって本当によかった)

十分に苦労が報われた気がして、爽やかな気分で会釈する。

「それでは私はこれで失礼します。朝陽さんはゆっくりしていらしてください」

嫁として認められていないので、中に上げてくれないだろうと思ったのだが――。

「せっかちな人ね。お茶くらい飲んでいきなさいよ」

(えっ?)

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