愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「隠していたことがあります。実は前にもお会いしているんです。藤江さんはお気づきでないようですが――」

「〝メドレー男〟の件ですか?」

「えっ、気づいていたんですか!?」

「もちろん。この前は逃げられてしまったから、お見合いを申し込んだんです。どうしてもあなたと話したくて。成美さんまでたどり着くのに多くの人を介さねばならなかった」

母の雇用主の顧客の友人の妻の従兄の職場の……などと、この見合い話の経路が複雑だったのを思い出した。

見合い写真は母が確認した後に回収され、成美の手元に届かなかった理由もやっとわかる。

(スポーツジムの人だと事前に私が気づいたら、お見合いに応じないと思ったからなんだ)

「結構大変でした」

朝陽は明るく笑って成美の前に片膝をつき、ひとり事情のわからない母は娘と彼の間で視線を往復させている。

成美は困惑しながら、目の前の彼を見つめた。

(私に謝罪を求めるためにお見合いを仕組んだの? それにしたら、怒っているようには見えないけど)

「あの時は大変失礼いたしました。今は深く反省しています」

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