モノクロに君が咲く



 広海水族館を後にした私とユイ先輩は、敷地内の穏やかな散歩コースを歩く。

 海沿いの並木道。耳朶をくすぐるのは、子どものはしゃいだ声。木々の葉が擦れるさざめき。それから、さざ波が堤防に打ちつけられる音。

 そのすべてが混ざり合って、ひどく優しい音色を紡ぎ奏でていた。

 もう手は繋いでいない。私が切り出すのを待っているのか、数歩うしろから距離を取ってついてくるユイ先輩は、さきほどからずっと黙り込んでしまっている。

「海が綺麗ですね、先輩」

「……うん、そうだね」

「真夏の海って、どうしてこうきらきらしてるんでしょうね。冬も澄んでいて綺麗だけど、やっぱり真夏は違った輝きがあるというか」

「…………」

 靴底がじゃりっと地面を掠めて、背後でユイ先輩が立ち止まる気配がした。

 さすがにもう伸ばせないか、と息を吐いて、ゆっくりと振り返る。

 ユイ先輩はときおり吹きぬける夏の爽やかな風に銀色の髪を揺らしながら、私を見ていた。あまりにも思い詰めた表情で。

「そんな顔、しないでください。話ができません」

「え……ごめん。俺、変な顔してた?」

 哀愁漂う眼差しにこちらまで切なさを募らせながら、私はゆるく首を振る。

「……あのね、先輩。私、もうすぐ死ぬんです」
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