モノクロに君が咲く

 そんな鈴が、俺に残してくれた手紙。

 持つ手が震えて止まらない。読みたいという気持ちよりも、その現実を受け止めなければならないことが、ひどく怖かった。

 自信がなかった。折れそうな気がした。

「まぁ……無理しなくても、また」

「だめよ。ちゃんと読んであげなさい」

 空気を割るように飛んできた声に、俺たちは揃って振り返る。屋上を吹き抜ける風にスカートを揺らしながら仁王立ちしていたのは、榊原さんだった。

「あの子が、わざわざ今日って指定して託したものなんだから。小鳥遊さんのことを想うなら、それくらいの誠意は見せるべきだと思うけど」

 突然の榊原さんの登場に、岩倉さんたちは面食らっているようだった。

 隼は隼で「げっ」という顔をしている。

 悪い子ではないのに性格がきついから嫌われがちで、いちおう元カレである俺も、いまだに彼女の気迫にはなかなか押されてしまう。

 それでも、榊原さんの言葉はいつも正しい。

 俺を絶対に逃がしてはくれない。そんな榊原さんはきっと俺と同じように不器用で、鈴と同じように真っ直ぐな性格なのだろうなと、最近は思えるようになった。

 この子は誤解されがちだが、基本的に誰かを想っての発言しかしないから。

「……うん、読むよ」

 俺は覚悟を決める。

 鈴の死後、目に見える形で彼女のことに触れるのは初めてだ。俺は封筒を開けながらハサミがほしいな、なんて思って、芋づる式に鈴の前髪を思い出してしまう。

 あのときの奇抜な前髪をしていた鈴は、純粋にちょっとだけ面白かった。
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