モノクロに君が咲く

 きっとこれからも、鈴と付き合わなければよかったなんて思うことはない。

 俺にとって鈴と過ごした時間は、かけがえのないものだった。

 鈴と出会っていなければ、俺はずっと灰色の世界でしか生きられなかっただろう。

 人形と揶揄されながら、他人への興味も自分への興味もなく、淡々と単調に色のない世界を揺蕩っているだけだった。

 けれど、今はこんなにも胸が痛い。

 痛くて痛くて痛くて、仕方がない。

 その痛みに、示される。

 どうしようもなく、俺が今、鈴がいないこの世界に生きているのだと。

 生きていかなければならないのだと。

「……弟くん。俺は、鈴と出逢えてよかったよ」

 止まらない涙をそのままに、俺は顔をもたげて弟くんを見つめた。

「心から、そう思う。ずっと一緒に生きたかったし、もっとやりたいこともたくさんあったけど。でも、俺のなかには変わらず鈴がいるんだ。だから、鈴が棲みついた心と一緒に、俺は生きていくよ。生きて、生き抜いて、いつか再会したときに、今よりもっと色づいた世界を乗せた絵を、見せてあげたい」

「春永、先輩……」

「……そうやって誰かを想うってことも、絵を描く理由も、全部、鈴が与えてくれたものだから。まだ、きっと全然、空っぽなのは変わんないけどさ」

 俺の描いた絵のように、俺はまだ完全に灰色の世界から抜け出せたわけではない。

 数え切れないくらいの後悔を抱えて、足掻きながら生きている。

 けれど、そこを照らしてくれる鈴が俺のなかから消えない限りは、きっと歩き続けることができるのだ。道を示してくれる彼女がいるから、迷いはしない。

「だから、君も生きて」
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