夢幻の飛鳥2~うつし世の結びつき~
蘇我小祚
斑鳩寺での事件が無事に解決し、2週間ほどが経過する。椋毘登は一つの大きな決心のため、彼の父親である蘇我小祚の元を訪れていた。
「父上、椋毘登です。部屋の中に入っても良いでしょうか」
「あぁ、構わない。入ってきなさい」
「では失礼します」
椋毘登がそういってから部屋の中に入ってみると、父親の小祚が、部屋の中で1人静かに座っていた。年齢はまだ40代手前だが、口数がわりと少なく、感情も余り出さない人物である。
そして蘇我馬子や境部摩理勢を兄に持つのだが、彼は2人と比べると、余り表舞台に出る事も少なく、いつも影のようにひっそりとしていた。
椋毘登は父親の前までくると、その場にゆっくりと腰をおろして座った。そして彼らの間には、親子の対面という割には、何とも緊張感のある雰囲気が漂っている。
「椋毘登の方から、私に会いにくるとは珍しい。母上や、兄弟達は皆元気にしているのか?」
「はい、弟達は相変わらず元気です。母上の方も寝たきりではありますが、話も出来ますし、食事もちゃんと取れています」
「そうか、それは良かった。それでお前は、私に何の用事があってきたのだ?」
「はい、俺も叔父上の護衛や、自身の仕事もだいぶ落ち着いてきました。なので己の今後について、そろそろ考えたいと」
「何と、位でも欲しくなったのか?」
「いえ、俺自身は位に余り関心はありません。だが今後必要になるなら、その時はお引き受けます」
「まぁ、お前は私の長子だから、いずれ臣ぐらいにはなれるだろ?」
「それは、そうかもしれませんね。だが今日はそのような話をする為に、ここに来た訳ではありません」
椋毘登はそれから真っ直ぐ背を正して、凄く真剣な目で、自身の父親を見つめる。
父親の方もそんな椋毘登の態度を目にし、これは只事ではないと感じ、それまでよりも一層に顔を強張らせるた。
そんな彼を見て椋毘登も一呼吸すると、ついに意を決して、本題を話すことにした。これは今後の彼にとって、己の人生に大きく関わってくることだ。
「実は今、妻にと考えている娘がいます」
それを聞いた小祚は、突然の椋毘登の話に少しばかり目を大きくした。さすがの彼も、この話には少なからず驚きがあったようだ。
「まさか、今回はそのような話しだったとはな」
「はい、それで相手の娘がどういう者かというと......」
「......構わぬ」
「はい?」
「お前が妻にと望んだ娘なのだろう。であれば、私は特に反対はしない」
「あ、あの父親。一応身分や立場的には問題ないと思う相手ですが、何も聞かなくて良いのですか?」
「あぁ、問題ない。私はお前を信用している」
椋毘登は彼の余りの発言に驚愕させられる。これは当人たちだけの問題ではない。何故なら、互いの一族の繋がりにも大きく関わってくることだ。
それを息子が良いから任せるなど、こんな父親は今まで全く聞いたことがない。
「だが、母親の意見だけは聞いておけ。あいつは何だかんだで心配性だからな」
「は、はぁ......」
(ちょっとまて。俺はこんな展開全く予想してなかったぞ)
「では父親は、この件に関しては賛成ということで、話を進めさせて頂きます」
「あぁ、分かった。あと相手の娘とも、ちゃんと話はしてあるのか?」
「えぇ~と、一応意思は伝わってますが、まだ正式には話してません」
「何んだと!まずはそこが大事だぞ。それは早く伝えてやりなさい。あと母上には、自分で話してやれ。あいつもこの話にはさぞ喜ぶだろう」
「分かりました、ではそう致します。ですが父親は、ひどく母上のことを気にされるのですね。これは正直意外です」
「父上、椋毘登です。部屋の中に入っても良いでしょうか」
「あぁ、構わない。入ってきなさい」
「では失礼します」
椋毘登がそういってから部屋の中に入ってみると、父親の小祚が、部屋の中で1人静かに座っていた。年齢はまだ40代手前だが、口数がわりと少なく、感情も余り出さない人物である。
そして蘇我馬子や境部摩理勢を兄に持つのだが、彼は2人と比べると、余り表舞台に出る事も少なく、いつも影のようにひっそりとしていた。
椋毘登は父親の前までくると、その場にゆっくりと腰をおろして座った。そして彼らの間には、親子の対面という割には、何とも緊張感のある雰囲気が漂っている。
「椋毘登の方から、私に会いにくるとは珍しい。母上や、兄弟達は皆元気にしているのか?」
「はい、弟達は相変わらず元気です。母上の方も寝たきりではありますが、話も出来ますし、食事もちゃんと取れています」
「そうか、それは良かった。それでお前は、私に何の用事があってきたのだ?」
「はい、俺も叔父上の護衛や、自身の仕事もだいぶ落ち着いてきました。なので己の今後について、そろそろ考えたいと」
「何と、位でも欲しくなったのか?」
「いえ、俺自身は位に余り関心はありません。だが今後必要になるなら、その時はお引き受けます」
「まぁ、お前は私の長子だから、いずれ臣ぐらいにはなれるだろ?」
「それは、そうかもしれませんね。だが今日はそのような話をする為に、ここに来た訳ではありません」
椋毘登はそれから真っ直ぐ背を正して、凄く真剣な目で、自身の父親を見つめる。
父親の方もそんな椋毘登の態度を目にし、これは只事ではないと感じ、それまでよりも一層に顔を強張らせるた。
そんな彼を見て椋毘登も一呼吸すると、ついに意を決して、本題を話すことにした。これは今後の彼にとって、己の人生に大きく関わってくることだ。
「実は今、妻にと考えている娘がいます」
それを聞いた小祚は、突然の椋毘登の話に少しばかり目を大きくした。さすがの彼も、この話には少なからず驚きがあったようだ。
「まさか、今回はそのような話しだったとはな」
「はい、それで相手の娘がどういう者かというと......」
「......構わぬ」
「はい?」
「お前が妻にと望んだ娘なのだろう。であれば、私は特に反対はしない」
「あ、あの父親。一応身分や立場的には問題ないと思う相手ですが、何も聞かなくて良いのですか?」
「あぁ、問題ない。私はお前を信用している」
椋毘登は彼の余りの発言に驚愕させられる。これは当人たちだけの問題ではない。何故なら、互いの一族の繋がりにも大きく関わってくることだ。
それを息子が良いから任せるなど、こんな父親は今まで全く聞いたことがない。
「だが、母親の意見だけは聞いておけ。あいつは何だかんだで心配性だからな」
「は、はぁ......」
(ちょっとまて。俺はこんな展開全く予想してなかったぞ)
「では父親は、この件に関しては賛成ということで、話を進めさせて頂きます」
「あぁ、分かった。あと相手の娘とも、ちゃんと話はしてあるのか?」
「えぇ~と、一応意思は伝わってますが、まだ正式には話してません」
「何んだと!まずはそこが大事だぞ。それは早く伝えてやりなさい。あと母上には、自分で話してやれ。あいつもこの話にはさぞ喜ぶだろう」
「分かりました、ではそう致します。ですが父親は、ひどく母上のことを気にされるのですね。これは正直意外です」