オレンジ服のヒーローは全力で彼女を守りたい
「ちょっと先に進むと大水槽があるね。
ちょうどダイバーの餌付けが見られる時間だな」

「う、うん」


パンフレットに目を落としながら翔太くんが言い、その少し後ろをついて歩いた。

通路を進むと四角い水槽が両側にいくつもあり、それぞれが光を放つ。

なぜか心臓がバクバクと不穏な音を鳴らし始め、呼吸が少し苦しい。


「あ、そこの水槽、映画に出てきた魚…
あおいちゃん?どうした?」

「ちょっと動悸がして…」


胸を押さえていると、翔太くんが私の目線までかがんだ。


「大丈夫。ゆっくり深呼吸して」


言われるがまま、呼吸に意識を集中させてゆっくり深呼吸を繰り返す。


「…よし、じゃあ行くよ」

「え、…ひゃっ!」


急に身体が浮いて変な声が出た。

なぜか翔太くんに横抱きで抱えられ、来た道を戻っている。


「え?え?翔太くん?」


何が起きているのかわからず、恥ずかしくて足をバタバタさせる。


「暴れると落ちるよ」

「だって…」


すれ違う人がじろじろ見ているし、微かながら黄色い声も聞こえる。

入口前の明るい場所に出ると、翔太くんは私をベンチにおろし、隣に座って私をじっと覗き込んだ。


「まだ動悸がする?」

「うん、ちょっと…でもだいぶおさまってきたかも。なんだろ」

「ごめん、気づかなかった。
多分昨日のでちょっと閉所暗所が怖いんだと思う」

「あ…」


そうか。確かに暗闇に入るときに怖い感覚があった。


< 14 / 42 >

この作品をシェア

pagetop