オレンジ服のヒーローは全力で彼女を守りたい
「そういうケースけっこうあるから。
エレベーターだけじゃなくて、事故起こした車の中に閉じ込められた人とか。
救助隊(おれたち)が行くと、過呼吸起こしてたりする」

「そうなんだ…ごめんね。
私が来たいって言ったのに、また迷惑かけて」

「迷惑じゃないよ。気にしないで。
こういうときは無理しないほうがいい」


大きな手がぽんぽんと頭をなでて、胸が密かに鳴った。


「あおいちゃんは休みの日何してる?」

「えっと、映画とか観るのが好きだよ。
休みの日に映画館に行ったりするんだけど…
さっきみたいなことがあると、行くのちょっと怖くなるね」

「んー、映画館も暗いもんな。
でも、今って無料配信の映画もいっぱいあるよね」

「うん、家でごろごろしながら観たりするよ」

「最近何観た?」

「えーっとね……」


通り過ぎる人たちを眺めながら他愛のない会話をしていたら、いつの間にかすっかり動悸は落ち着いていた。


「…もう大丈夫そう?」


翔太くんが首を傾けて再び私を覗き込む。

きっと私の気を紛らすために色々と話をしてくれていたんだろう。


「うん、大丈夫。
ありがとう」

「じゃあ、今日はもう戻ろうか」

「…うん」


少し胸がチクンとした。

そうだ。よく考えたら翔太くんは仕事明けなのだ。

仮眠があったとはいえ相当疲れているに違いない。

スイーツを食べに来ただけなのに水族館に付き合わせてしまって、その上館内を回らず出て行くなんて申し訳なさすぎる。


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