オレンジ服のヒーローは全力で彼女を守りたい
あの日、エレベーターで瞳を潤ませてうずくまっている彼女を見て驚いた。

俺の服をぎゅっと掴んで泣く彼女がとてもかわいくて、やっぱりこの子のことが好きだと…できるなら、俺が守ってやりたいと思った。

お礼がしたいなんていうから、咄嗟にスイーツをダシにしてはみたけど…


「告白、かあ」


フラれたら俺は引っ越したほうがいいんだろうか。

気まずくなるのも嫌だし、やさしい彼女に気を使わせるのも嫌だ。

女性経験は決して少なくはないのに、俺はこんなに恋愛に対して臆病だっただろうか。

彼女の笑顔を見ていると、今までに感じたことのない愛しさがこみ上げてくるのが不思議だ。


「いただきます」


いつもよりも丁寧に手を合わせ、箸をとって厚焼き玉子を一口頬張る。


「…うまい」


コンビニ弁当なんて比にならない美味しさが口いっぱいに広がり、幸せな気持ちになった。


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