ひとりでママになると決めたのに、一途な外交官の極上愛には敵わない
自分でも作りすぎたと思うほどたくさんの料理は、櫂人さんがひと口ごとに「おいしい、おいしい」と言いながら食べてくれた。つられた拓翔も「おいちー」と言いながらいつもよりたくさん食べた。
反対に私はあまり料理が入らなかった。ふたりの様子に胸がいっぱいだったのだ。
そうして三つあるランチボックスがすべて空になった頃、にぎやかな音楽が流れてきた。すぐ広場に人が集まっているなぁとは思っていたが、どうやら小さな子ども向けのミニショーが始まるらしい。
「たっくんもー!」
膝の上の拓翔が、ショーの方を指さしながら見たいと訴える。
「お片づけするからちょっと待ってね」
今すぐにでも駆けだして行きそうな拓翔を引き留めて、ランチボックスを片づけようとしたら、櫂人さんが「俺が行くよ」と私の膝の上から拓翔を抱き上げた。
「ありがとうございます。私もここを片づけたらすぐに行きますので」
「いや、俺だけで大丈夫。きみはここにいて。少し休んでおいたらいい」
「いえ、でも……」
たしかにここから見える場所なので、なにか困ったことがあればすぐに戻って来られるけど、母親の自分がのんびりと休憩して櫂人さんに子守りを任せるわけにはいかない。
テーブルの上のランチボックスを手早く片づけながら彼の申し出を断ろうと口を開く。
「私なら大丈夫です。すぐに行きますから拓翔と先に――っ!」
すっと頬に差し込まれて息をのんだ。
「赤くなってる」
目の下を親指の腹でそっとなぞられ、びくんと肩が跳ねた。そんな反応をしてしまったことがとても恥ずかしくなる。見る見る赤くなっていく顔を隠したいのに、頬に優しく添えられた手がそれを許してくれない。
「やっぱり無理をしたんだろう? 弁当屋の仕事もあるのに、こんなにたくさんの料理を作ってきてくれて……」
眉根を寄せた櫂人さんに、なにも言わず顔を左右に振る。