ひとりでママになると決めたのに、一途な外交官の極上愛には敵わない
櫂人さんは別れた〝本当の理由〟を話さなかった。祖父が知れば負い目を感じることは明白だ。こんなときまで相手のことを思いやれる彼の懐の深さに胸が震える。
けれど、それを知らない祖父は顔を真っ赤にして地を這うような声を出した。
「おまえか……長い間さやかを苦しめた相手は」
厳しい言葉に思わず「それは!」と口を挟む。
「おまえは黙ってなさい」
ぴしゃりとはねつけられて息をのんだ。
「おまえのような無責任なやつに大事な孫娘を任せることはできん! 二度とその面見せるな」
声を荒げた祖父に驚いて、拓翔がしがみついてきた。拓翔を抱きしめながら唇を噛みしめる。
このままじゃだめだ。ここで引き下がったら、櫂人さんだけが悪者にされてしまう。そうじゃないのだ。私が選んだ道だということを、別れた理由を含めてきちんと話さなきゃ。
「おじいちゃん聞いて」
言葉を続けようとしたとき、彼が私の手に触れた。隣を向くと目が合う。彼は小さく首を振り、両手を膝に置いて背筋をぴしりと伸ばした。
「おっしゃる通りです。どんな理由があったにしても、私がさやかさんにつらい思いをさせたことは事実。さやかさんにもおじいさまにも、そして拓翔君にも、心からお詫びいたします。申し訳ありませんでした」
床に頭がつく勢いで、深々と頭を下げた。
「ですが、これだけは信じてください。別れてからもずっとさやかさんだけを想ってきました。今も変わらず彼女を愛しています。彼女と、彼女と拓翔君を、今度こそ幸せにしたい。お願いします」
居間がしんと鎮まりかえった。
「帰ってくれ」
「おじいちゃん!」
にべもない様子の祖父に思わず声を上げる。
ゆっくりと頭を上げた櫂人さんが「また来ます」と言って立ち上がった。
玄関に向かう櫂人さんを追いかけようと立ち上がったとき、背後から「うう……っ」とうめく声が聞こえた。振り返ると、祖父がちゃぶ台に突っ伏すようにしてうずくまっている。
「おじいちゃんっ!」
慌てて駆け寄った。祖父は胸のあたりを強く握り、苦しそうにうなっている。頭が真っ白になった。
「さやか、救急車を呼ぼう」
隣にしゃがんだ櫂人さんが、携帯電話を取り出した。
けれど、それを知らない祖父は顔を真っ赤にして地を這うような声を出した。
「おまえか……長い間さやかを苦しめた相手は」
厳しい言葉に思わず「それは!」と口を挟む。
「おまえは黙ってなさい」
ぴしゃりとはねつけられて息をのんだ。
「おまえのような無責任なやつに大事な孫娘を任せることはできん! 二度とその面見せるな」
声を荒げた祖父に驚いて、拓翔がしがみついてきた。拓翔を抱きしめながら唇を噛みしめる。
このままじゃだめだ。ここで引き下がったら、櫂人さんだけが悪者にされてしまう。そうじゃないのだ。私が選んだ道だということを、別れた理由を含めてきちんと話さなきゃ。
「おじいちゃん聞いて」
言葉を続けようとしたとき、彼が私の手に触れた。隣を向くと目が合う。彼は小さく首を振り、両手を膝に置いて背筋をぴしりと伸ばした。
「おっしゃる通りです。どんな理由があったにしても、私がさやかさんにつらい思いをさせたことは事実。さやかさんにもおじいさまにも、そして拓翔君にも、心からお詫びいたします。申し訳ありませんでした」
床に頭がつく勢いで、深々と頭を下げた。
「ですが、これだけは信じてください。別れてからもずっとさやかさんだけを想ってきました。今も変わらず彼女を愛しています。彼女と、彼女と拓翔君を、今度こそ幸せにしたい。お願いします」
居間がしんと鎮まりかえった。
「帰ってくれ」
「おじいちゃん!」
にべもない様子の祖父に思わず声を上げる。
ゆっくりと頭を上げた櫂人さんが「また来ます」と言って立ち上がった。
玄関に向かう櫂人さんを追いかけようと立ち上がったとき、背後から「うう……っ」とうめく声が聞こえた。振り返ると、祖父がちゃぶ台に突っ伏すようにしてうずくまっている。
「おじいちゃんっ!」
慌てて駆け寄った。祖父は胸のあたりを強く握り、苦しそうにうなっている。頭が真っ白になった。
「さやか、救急車を呼ぼう」
隣にしゃがんだ櫂人さんが、携帯電話を取り出した。