イケメン外科医が激しく寵愛してきます。【メイン更新中】


 美味しそうにおにぎりを頬張る幸野を見て、そうだよな……と、ため息を吐く。


 さっさと忘れようと、俺も朝食を胃に押し込むように食べる。


 風呂から出た幸野の、髪を急いで乾かし、腕を引っ張りながら急かすように家を出る。


「ちょ、久我先生早いですって!」

「急げって、風呂も長ぇし、間に合わないだろ!」

「まだ6時30分じゃないですか! 私、7時に家出てますけど!?」

「…………は、はあ!? おまえ昨日早かったのはなんなんだよ」

「あれはたまたま目が覚めただけで、偶然です!」


 電車に乗り込み釣り革に捕まる。今日も満員だ。人混みに潰されそうな幸野を抱き寄せる。


「俺の服掴んでていいから」

「……あ、ありがとうございます」


 例えキスのことを覚えていなくても、こうやって少しずつ意識させていけばいい。


 抱き寄せているせいかもしれないと思っていたけれど、幸野はやたら俺の服に顔を近づけている。


「おい、幸野、酔ったか?」

「いえ。久我先生、いい匂いするなあって。もし逆の立場なら久我先生のお尻、触っていたかもしれません」


 思考がセクハラ中年男性並みの幸野のせいで、恋愛に発展できる予感がしない。


< 65 / 84 >

この作品をシェア

pagetop