紅葉踏み分け、君思ふ
部屋のドアを開けるとちょうど反対側のドアからも誰か出てきた。
「あ!お姉ちゃん!」
「おはよう月夜」
くるくるした水色の髪に、それよりも少し濃い青の目を輝かせてわたしに笑いかけたのは弟の月夜。六歳で今年から小学生だ。
「今日だよね?京都行くの。ボクの頼んだお土産、ちゃんと覚えてる?」
少し首を傾げてわたしに聞く弟は天使の愛らしさを持っている。
(あぁ、かわいい・・・!)
わたしは月夜の髪を少し撫でながら頷く。
「もちろん覚えてるよ。大丈「かえでぇぇぇぇぇぇぇ!」うわっ!あ、お、お兄ちゃん!」
わたしを見るなりわたしに抱きついてきたのはわたしの四つ上のお兄ちゃん、正樹。
お兄ちゃんの性格を一言で表すなら、シスコンだと思う。
「おはよう、かえで、月夜。かえで、今日出発だったよな?お兄ちゃん、心配だよ。一緒に行かないか?」
「だから、行かない!前ちゃんと話し合ったでしょ?」
わたしがこの前の話し合いのことを言うと月夜もうんうん、と同意してくれる。
この前の話し合いというのは、わたしが卒業旅行に行きたいと行ったところお兄ちゃんもついて行くってことになったため、ついてほしくないわたしがお兄ちゃんを必死に説得した時の事だ。
(あの時ちゃんと説得したよ。なんで今になって・・・)
わたしはため息をついてしまう。わたしは落胆のため息だったがそれがお兄ちゃんには怒りのため息だと思ったらしい。慌ててわたしを宥め始めた。
「いや、お兄ちゃんはかえでのことが心配なだけで、別について行くつもりは・・・」
「あ、よかったぁ。じゃあついてこないで、ね?」
無事お兄ちゃんを説得できたところでやっと朝ごはんだ。
ダイニングに向かいながらふとお兄ちゃんの顔を見る。黒のストレートの髪にオレンジの目をしているお兄ちゃんは本当にカッコいい。
(わたしも、二人やお父さんたちみたいに綺麗だったらよかったな)
小学生の時に同じ年の男子に「ブス‼」と言われたことが頭をよぎる。
(ダメダメ!あれを思いだしちゃ!)
ちなみに、かえで本人は気づいていないがかえではアイドルレベルの美人だ。だが、本人は小さい頃の事を引きずってブスだと思っているが。