紅葉踏み分け、君思ふ

「あ、お母さん、二人ともきたよ〜」

先にダイニングに行っていた月夜がお母さんの方へ顔を向けて言う。

「あ、やっと来たわ。おはよう、正輝、かえで」

「おはようお母さん」

わたしたちのお母さん、万依はわたしよりも少し濃い桃色の髪に赤色の目をしてる。とってもきれいで優しいお母さんだ。

その隣でみんな分の飲み物を注いでいるのはわたしのお父さん、直正。

「かえで、今日は何飲みたいか?」

「うーん、オレンジジュースがいい!」

「了解。正輝は紅茶でいいよな」

そういいながら手際よく紅茶と自分とお母さん用のコーヒーを入れる。

わたしとお兄ちゃんも手を洗ってから手伝う。全部の準備ができたら朝ごはんだ。

「いただきまーす!」

みんな一斉に食べ始める。今日の話題は勿論、わたしの卒業旅行の事。

「かえで、日焼け止めちゃんと持った?それと、血はある?」

お母さんがパンにバターを塗りながら尋ねる、普通の家では絶対交わさないであろう質問。

「うん。大丈夫。血も予備の二パックもっていくから」

日焼け止め、血。わたしはこの二つに気を付けなければならない。なんでって、わたしは・・・

「いい?絶対にあなたがヴァンパイアであることがばれないようにね」

「おい、人狼であることも、な」

お父さんもかぶせるように言う。

「わかってるよ」

そう。わたし、本宮かえでは、人狼とヴァンパイアのハーフなのだ!

お父さんが純血の人狼。お母さんが純血のヴァンパイア。その血を平等に引き継いだわたしは人狼でもあり、ヴァンパイアでもある。

お兄ちゃんはお母さんの血が強くて、月夜はお父さんの血を多く引き継いだからもう一方のほうは殆ど無いといってもいいぐらいなのにね。

(まぁ、ヴァンパイアと人狼って苦手なもの結構一緒だけどねぇ・・・)

そうおもいながらオレンジジュースを飲みこんだ。
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