紅葉踏み分け、君思ふ

お茶は目上の人から出しましょう。

「・・・ん?夜?」

荷物に整理のあと、寝てしまったのだろうか。

「・・・あ、ちょっと待って。確か今日って・・・」

(今日は三月十二日・・・ってことは・・・!)

わたしの記憶が正しければ、今日の夜に新撰組の母体の壬生浪士組が会津藩お預かりになる。

(待って待ってまだ夜じゃないよね)

せっかくだしその瞬間を見てみたい。

「とりあえず土方さんの部屋に行けばいいかなぁ」

記憶を頼りに部屋まで行ってみる。

(確か、ここだった)

「失礼しまーす」

「なんだぁ・・・ってかえでか。どうした?」

(え?なんて言おう?)

「今日壬生浪士組の承認の書状か伝言が来るからそれを見たい」って行っていいのだろうか。

(いや、絶対ダメでしょ!)

「えっと・・・」

わたしが言うのを渋っていると土方さんがポツン、と言う。

「もしかして・・・待ってるのか?」

何を、とは明確に言われなかったが、その言葉にビクッと体を震わせる。

「なんで、分かって・・・?」

「お前、未来がわかるんだろ?」

(あ、そっか。それで・・・)

納得して土方さんの方を見ると彼がニヤッとしてこちらを見ていた。

「だが、言付けが届くのは勝っちゃんの部屋だ。ってことで一緒にくるか?」

「え、は、はい!」

(土方さんが近藤さんのことを勝っちゃんって・・・やばい、感動・・・っ)

そんな事を思いながらさっさと部屋を出た土方さんを追いかける。

「ここだ。道、覚えたか?」

「え?これ、覚えてないといけなかったですか?」

正直、覚えたかと言われると微妙。

「その反応、覚えてなかったか?」

「いや、急に言われてもわかりませんって!」

「おい、歳、入るなら入れ入れ」

突然、近藤さんが会話に入ってきてびっくりしてしまう。

「おぉ。かえで、早く入れ」

「し、失礼します」
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