紅葉踏み分け、君思ふ
部屋に入ってグルっとあたりを見渡す。

(土方さんの部屋よりも大きい、ねぇ)

外部の人を招き入れるようにきれいに整えられている。茶請けがあるからか、微かに甘いにおいがする。

(・・・あそこの戸棚の上から二段目にお饅頭、三段目に羊羹かぁ・・・食べたい)

さっきまで寝ていたから夜ご飯を食べていないわたし。油断したらお腹がなりそうだ。

「どうしたんだ、歳?こんな時間に」

「あぁ、もうすぐ例の使者が来るぞ」

「は?なんでそんな事・・・ってかえでか」

「あったり~!」

ピースサインをして言う。

多分もうすぐ来ると思う。そう思っているとガラッと襖があいて左之さんが顔を出した。

「なぁ、近藤さん、客だぜ」

ザワッと空気が揺れる。

「通してくれ」

「りょうかーい」

左之さんはそう言うと玄関に向かう。

「おい、勝っちゃん、お茶とか準備しておいた方がいいんじゃねぇか?」

「え?ほ、ホントか?」

(え?準備してないの?マズくない?それ)

「お茶はここにあるから湯呑だけ用意すればいいが・・・茶請けがない」

「は⁉勝っちゃんそれじゃあ客に失礼じゃねぇか!!」

「茶請けならありますよ」

「「・・・は?」」

近藤さんと土方さんが同時にわたしをみる。

「それと、どうせならちゃんと出しましょうよ。ってことでそのお客用の湯呑だどれですか?」

「あぁ、これだ」

近藤さんがそばにあった風呂敷から取り出す。

「それをお盆の上にそれっぽいお皿と一緒に乗せて!早く!」

指示を出しながらわたしはさっき見つけたお饅頭を戸棚から取り出す。

「は?お前、いつそれに・・・」

「詳しいことは後!じゃあ、一回わたし出ますね。あと、うまく口裏合わせてくださいね」

言いたいことだけ言ってお盆を持って外へ出る。角を曲がると同時に反対側から左之さんともう一人の気配が近づいてきた。

(うわ、ギリギリセーフ!)

襖を開け閉めする音が聞こえたのを確認して近藤さんの部屋に早足で近づく。

「わたし・・・勇・・」

「これは・・・・・・しく・・・・・」

三人の話し声が聞こえる。話に区切りをついたのを確認してから出来るだけ音を立てずに開ける。

「失礼します。お茶と茶請けをお持ちしました」

お辞儀をしてからチラッと座っている位置を確認する。
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