紅葉踏み分け、君思ふ

土佐弁って・・・理解不能です

その夜。

「ふぅ・・・!風がきもちい・・・!」

わたしはみんなに隠れて外に抜け出していた。

(とりあえず会津藩の協力は得た。次は・・・尊王攘夷派と仲良くする!)

わたしは今日来た男物の服を着て腰には「紅葉《くれは》」を下げている。

紅葉は本宮家に伝わる妖刀だ。普通の刀に比べて軽く、イヤリングとして持ち運ぶこともできる。

妖怪や妖を斬れたりオーラを纏って使うことで広範囲に自分の能力を広げられたりできる優れものだ。

「とりあえず坂本龍馬さんを探したいんだよね・・・」

坂本龍馬。彼は討幕派でありながら武力討伐に反対していた人物だ。

(それに・・・今の時点で日本の状況を客観的に見ているのは二人だけ)

一人は流石に遠すぎる。そう考えるとやっぱり坂本龍馬が妥当だろう。

(でも、ね・・・まさか京都がここまで広いとは)

ここはあの子の出番だろう。そうと決まれば、とわたしは紅葉の刃を腕に当てる。

「っ」

片手で血を集める。ある程度溜まったらそこにそぉっとオーラを注ぐ。

しばらくすると血がだんだん固まっていく。

(後ちょっと・・・)

鮮やかな赤がだんだん赤黒くなって、やがて真っ黒に変わる。

それと同時に液体だった血も形を持って来た。

「久しぶり、サラ」

わたしは真っ黒いコウモリに向かって言った。

サラ、というのはわたしの使い魔。今は小さいコウモリの姿だけど実際は人一人余裕で乗せることができる大きさだ。

「お仕事、頼んでいい?人を探して欲しいの。あなたにしかできないの」

そういうと嬉しそうにわたしの周りをパタパタと飛び回る。

「ちょっと、くすぐったい!分かったから・・・!今から送るから」

オーラを伝って坂本龍馬のイメージを送る。

「キキッ!」

「え⁉︎もう見つけたの⁉︎」

イメージを送ってすぐ、サラが見つけたと言う。

「違うよ!ただ早すぎてびっくりしただけ!疑ってないから!」

怒るサラを宥めてからそこに連れて行ってくれるように頼む。

「キッ!」

しばらくついていくとサラがある宿の前で泊まる。

「ここね。後はわたしが探せるからもう帰って大丈夫。ありがとう」

サラの周りにあった自分のオーラを取り込む。刹那、目の前から消える。

(今・・・十時半・・・夜明けの時刻を考えると五時までにはお暇しないと。でもとりあえず・・・)

坂本龍馬を探そう。

わたしは息を思いっきり吐いて、吸う。

(気配を、逃さないように・・・五感全てを最大限引き出す・・・!)

人数は十人。

(台所に三人。一階に一人。離れたところに・・・四人。二階には残りの二人)

台所の三人は無関係だろう。わたしは残りの七人に集中する。

(一人でいるのは・・・墨の匂いと紙の匂いがする。微かに算盤を弾く音・・・店主さんか)

別の部屋にいる四人は結構飲んだのか、お酒の匂いがする。

(うぅ、ここは一旦パス!)

最後の二階にいる二人。

(こっちもお酒の匂いはするな・・・後、この匂いは・・・火薬?鉄の匂いもする・・・鉄砲!)

「あたりは二階!」

助走をつけて二階のお目当ての部屋の窓に飛び移る。

そっと窓に耳をつけてみると微かにこえが聞こえる。

「だ・・・」

「龍馬・・・」

(龍馬!あたり!!)
< 35 / 63 >

この作品をシェア

pagetop