紅葉踏み分け、君思ふ

わたしと、芹沢さん

「おはよう〜」

「かえでちゃん!おはようございます!」

わたしの挨拶に一番に反応してくれたのは総司さん。

「かえでおはよう!あれ、なんか眠そうだけど大丈夫か?」

(う、)

平助くんに言われてビクッと体が跳ねる。

(自然に、自然に・・・)

「き、昨日ちょっと怖い夢見て・・・あまり眠れなかったの」

「え?大丈夫なの?」

「うん。今日は何もなかったし、ご飯食べてちょっとやることしたら寝ようと思って・・・」

「却下だ」

「え⁉︎土方さんなんで・・・?」

突然現れた土方さんに戸惑いながら聞く。

(今日なんかあったっけ?え⁉︎)

「今から芹沢さんのとこ行け」

「・・・え?」

(ちょっと一回落ち着こう。今から芹沢さんとこ行け・・・え?)

わたしの疑問が通じたのか、腕を組みながら土方さんが吐き捨てるように言う。

「お前、昨日松平様のところに最後まで残っただろ?」

「え、うん」

「それが原因だ」

なんと芹沢さんはわたしが最後まで残ったと聞いて「かえでという奴は聞いたことがない。入隊するならきちんと儂に言え」と言うような事を言ってきたらしい。

近藤さんたち試衛館組は必死になって止めたらしいけど結局説得しきれなかったそう。

「ってことで、朝餉食べ終わったらすぐ芹沢さんのとこに行け」

「え?わたしだけで?」

「いや、俺と山南さんが着いてく」

(よかった・・・じゃない!・・・いや、意外に良かった・・・?)

よくよく考えてみれば、芹沢さんは新撰組のことを一番に考えていたはず。

(大和屋焼き討ちも、新撰組の資金を得ようとしたのが始まりだったし・・・って、これ、芹沢さんどうにかしないと新撰組の評判ダダ下がり?)

どうやら、わたしに選択肢はないようだ。

「わかりました、行きます・・・」
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