紅葉踏み分け、君思ふ
思わず尊敬の眼差しを向ける。

(・・・!)

刹那、急に背筋が冷たくなる感覚。思わず後ろを向いてしまう。

(後ろは・・・窓。窓?)

「あ!」

わたしは慌てて窓を開ける。少し冷たい空気が頬を掠める。

(この感覚・・・日の出!)

ヴァンパイアの弱点の一つは、陽の光だ。今では日焼け止めクリームもあって結構外に出歩きやすくなったが今は塗っていない。

(つまり、今の状態で外に出て日光を浴びたら・・・死)

「すみません!急だけど帰ります!連絡はこれを使って下さい!」

わたしは自分の血を含んだ紙を坂本さんに渡す。これに書く事でサラが勝手にわたしに届けてくれるのだ。

「いろいろありがとうございます!それでは!」

「あ、ちょ・・・」

二人の制止も聞かずに窓から飛び降りる。手頃な屋根の上に登ってから屯所に向かって全力で走る。

(もぉ!時間管理なんでちゃんとしなかったの、わたし!)

しかし、すぎてしまった時は戻せない。反省は程々に全力疾走。

(あとちょっと・・・!)

屯所の屋根が見えて来た。わたしの部屋には窓がないから中から入る必要がある。

(うーん・・・土方さんの部屋の前は通りたくないから・・・)

頭の中で一番良いルートを組み立てる。決まったら即行動。

静かに屯所の中に入る。因みに今わたしがいるのは永倉さんの部屋の前。

(ここから曲がって・・・)

頭の中で抜き足差し足と歌いながら歩く。

(よし・・・!着いた・・・!)

そっと襖を開けて中に滑り込む。襖を閉めた瞬間、予めセットしておいた日の出のアラームが鳴る。

(ギ、ギリギリセーフ・・・)

思わずその場にへたり込んでしまった。

(後はさっきまで寝てた感出して広間に行けばOK!よくやった、わたし!)

少し眠いのはしょうがない。どうせお昼は暇だからその時にでも寝よう。

(松平様と会って、坂本さんと交渉して・・・わたし、もう十分やってよね?うん)

ものすごく濃い一日だったと思う。

(今日は休憩!寝よう!)

そう思ってたのに。

「今から芹沢さんのとこ行け」

(な、なんでこうなった・・・⁉︎)
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