紅葉踏み分け、君思ふ

わたしの秘密と、あなたの秘密-1-

「・・・ん」

目を覚ますと、見慣れた天井が目に入った。どうやら自分の部屋に帰ってきたみたい。誰がここまで運んできてくれたんだろ?

上体だけ起き上がると枕元にお菓子やらお花やら本やらが積み重なっていた。うーん、お菓子は多分総司さんでしょ。本は・・・山南さんかな?お花はそれ以外って感じ。ってか、このお花ちょっと枯れてる!花瓶に入ってないからかな?

「かえでー入るぞ」

今の状況を分析してたら元気な声と共に平助くんが入ってきた。そして上体だけ起きていたわたしとばっちり目が合う。目が合うと平助くんは元々大きな目をさらに見開いて手に持っていたお花を落とす。

(あ、このお花達は平助くんだったのね)

「あの、平助、くん?」

「お、お、」

わたしが呼びかけても彼は反応せずにパクパクと口を開け閉めするだけ。

「ちょっと平助!置いていかないて、くれ、、よ・・・」

二人して固まっているとそこに追いかけてきたであろう佐之さんがきた。そしてわたしと目が合い、平助くんみたいに固まる。デジャブ!デジャブ!

「か、えで、ちゃんが・・・」

そこで平助くんもやっと処理落ちし終わって総司さんと一緒に叫ぶ。

「「かえでが起きたぁぁぁぁ!」」

ちょ、声大きい!鼓膜破れかけたから!

でもそんなことを思ったものほんの一瞬。次に瞬間にはドタドタと音がして見慣れた顔が目一杯に広がる。

「かえで、起きたのか⁉︎」

「かえでさん、大丈夫でしたか⁉︎」

「死んじゃったんじゃないかと思ったじゃないか!」

「・・・目が覚めて、よかった」

(え?わたし、そんなに寝てたの?)

びっくりしたのか顔に出ていたのか、山南さんが苦笑いをしながら口を開く。

「かえでさん、あのあと今日を含めて二ヶ月と五日、寝てたんですよ。あまりにも起きないので死んでしまったかと思いましたよ」

(え?二ヶ月と、五日?)

「え、いま、今日何月何日ですか⁉︎」

「今日は五月の二十一日だよな?」

近藤さんの言葉にさぁっと顔が青くなったのを感じる。

(やばっ、この予定が特にない二ヶ月の間にいろいろ手を回そうって思ってたのに・・・!)

「あの、ごめんなさい!二ヶ月も寝てて・・・」

バッと頭を下げるとフワッと頭に温かい体温を感じて少し頭を上げると近藤さんがわたしの頭を撫でていた。

「謝らなくていいんだよ。かえでもここにきて多少疲れていたんだろ?この二ヶ月はこれと言った大事もなかったし、今休めてよかったな」

(・・・近藤さん、多分わたしが血をみた時どうなったか知ってるよね・・・)

近藤さん大好きの二人のことだ。あの時の事は最初から最後まで報告したはず。

(だけど、みんな、聞いて来ないんだ・・・)

心がぽかぽかとあったかくなっているとドタドタと音がしてさっき新八ちゃんがしめた襖がガラッと開いて額に汗を浮かべた総司さんが立っていた。

「総司さ「かえで!!」うわっ!」

いきなり抱きついてきて一瞬息が止まる。恐る恐る「総司さん・・・?」というとか細い声で「莫迦・・・」と言われた。

「あのあと急に倒れちゃうし、ここに運んでも起きないし、本当に心配したんだからね・・・!」

半泣きでそう言い切ってそのままギューっとわたしを抱きしめて離さない手をそっと撫でる。

「もう起きたから。もう元気いっぱいですし!やりたい事いっぱいあるから、ね?とりあえず離してくれると・・・」

「ん、分かった」

そう言って素直に離してくれた総司さんに笑ってから同じく総司さんと一緒に部屋に入ってきた源さんの方へ顔を向ける。

「源さん」

「無事目が覚めてよかったです。でもまだ無理は禁物、ですよ」

「はい」

わたしが倒れた原因を一切聞いてこず、ただただ「よかった」と言ってくれるみんなに胸が苦しくなる。

「・・・全部、話します」

「え?かえで、今なんて・・・」

「わたしが倒れた理由、この時代に来た理由。全部話す・・・聞いてくれる?」

わたしの顔がいつになく真剣だったからか、みんなは顔を見合わせて、コクリ、と頷いてくれた。
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