紅葉踏み分け、君思ふ
ここでは話が聞こえてしまうかもしれないから、とつれてこられたのは近藤さんの部屋。

最初にこの部屋にお邪魔した時よりも書類が増えているその部屋を近藤さんと左之さんが手早く片付けてみんなが座れる分のスペースを作る。

「じゃ、話してもらおうか」

土方さんの言葉に頷いて口を開く。

「まず、わたしが倒れている間の話なんですけど。わたし、倒れている間にある人にあったんです」

「倒れている間にぃ?幽体離脱ってことか?」

「うーん、どっちかっていうと意識だけ別の場所に連れてこられた、って感じかな?で、そこであった人にこの時代に連れてこられた理由を教えてもらったんです」

「で、その理由ってなんなんだ?」

平助くんの問いにわたしはみんなにわかるように噛み砕いて説明をする。

「まず、わたし達ってお母さんから生まれてきたでしょう?お母さんもお母さんのお母さん、つまり祖母から生まれた。そういうふうに辿っていくと一人の始祖に行き着く・・・ここまでわかる?」

わたしの言葉にみんな頷いてくれたのを確認して言葉を続ける。

「それで、問題はわたしの始祖。これが神様の手違いでいなくなっちゃったのよ」

「・・・?それとかえでちゃんがここに来たのとなんの関係があるの?」

総司さんが不思議そうに首を傾げる。近藤さんや平助くん、一さん、佐之さん、新八ちゃんもよくわからないと言った表情だ。一方、山南さんや土方さんはハッとしたように顔を強張らせてわたしを見る。

「わたしは、わたしの一族の始祖になって、この『始祖がいない』という矛盾を解消する為に来たの」

この言葉にみんなびっくりしたようにわたしを見る。

「なるほど・・・かえでさんの一族が生まれるように、一族の一人、つまりかえでさんが時を戻ってその一族を作る、というわけですね」

「そういう事、ややこしいよね・・・」

「でも、なんでわざわざたった一つの一族のためにするんだ?時を戻るって結構危険じゃないのか?」

「わざわざじゃないですよ。一族が一個無くなるのは結構大事です。結局、わたし達はどこかで血が繋がっているのですから」

佐之さんの言葉を嗜めるように山南さんが彼の背中を叩く。

「・・・勿論、それもあるんですけど、わたし達一族は、あなたたちと全く存在が違うんです」

「・・・!それって・・・」

「総司さんとか、一さんとかは目の当たりにしたと思うし、他のみんなも三人から倒れる直前のことは聞いたと思うけど・・・」

「・・・あぁ」

申し訳なさそうにいう土方さんに軽く笑い返す。

「どうせいつかはバレると思ってたのでそんな顔しなくても大丈夫です。ここからはわたしと、わたしの一族について話しますね」
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