紅葉踏み分け、君思ふ

楽しい(?)大掃除の時間です!

わたしと源さんが屯所に戻ると、既にみんなはお昼ご飯を食べ終わっていたので、二人で残り物を手早く食べ終え、手紙をサラに預けたら近藤さんの元へ向かう。さっき高杉さんに言われたことを伝える為だ。ちなみに、情報提供者である三人の名前は言うつもりはない。もしそこらへんを聞かれたらうまう誤魔化すつもりだ。

「・・・そんな病が。分かった。その、提供者によろしく伝えてくれ」

近藤さんとの面会を終え、自分の部屋の戻る。その途中、異臭を感じて思わず立ち止まる。

(なに?この匂い・・・臭っ)

だけど、隣を歩いている源さんはなにも匂わないのか普通の顔で歩いている。

「・・・あの、源さん。こっちってなにがあるんですか?」

異臭源と思われる方向を指差すと源さんは当たり前だと言うように答えてくれる。

「あぁ、その先は隊士たちの部屋ですよ」

「隊士たち・・・あぁ!」

思い出した。寄せ集めだった浪士組は水あたりや食あたりが多く、体調不良者がいつもいると言うことを。

そしてその原因の一つがこれ。

「屯所の衛生状態!」

「わ!かえでさん、急に・・・」

「源さん!大掃除しましょう!今いる隊士を全員広間に集めてください!今すぐに!」

「え?あ、分かりました」

多少殺気を込めて言うと源さんは喜んで了承してくれた。わたしは今きた道を戻って近藤さんの部屋へ向かう。

「近藤さん!大掃除しましょう!ってか、します!」

「んなっ!どうした急に・・・」

「これは決定事項です!」

「おいおい、急にどうしたんだぁ?」

「土方さん!今から大掃除しますよ」

「はぁ?急になに言ってんだ?」

不思議そうにいう土方さんになんかイラついてしまう。

「あんな不衛生な状態、病人が出ますよ⁉︎もしもの時、全員が体調不良で出動できなかったらシャレになりませんよ⁉︎」

(あと、わたしが我慢できない・・・!)

そんなことを心の中で思いつつ、必死に土方さんに建前をあげていると難しい顔をした土方さんが(渋々) 頷いてくれた。

「わかった。だが、一つ条件というか、後でかえでに聞きたいことがあるんだが」

「分かりました!なんでも聞くんでとりあえず許可してくれるんですよね⁉︎」

「あ、あぁ」

「やったぁ!とりあえず、箒と雑巾を用意してください。あとこれから必要なものは・・・」

「あとで全部聞く!とりあえずさっさと掃除してこい!」

「はーい!」

ってことでお掃除のお時間だ。

わたしが着替えを終えて広間に向かうと既に半分ほどの隊士が集まっていた。なにが行われるのか知らないまま集められたのか、大多数は怪訝そうな顔で固まっている。

「あぁ、かえでさん。土方さんの許可が出たのですか?」

「はい。無事、心置きなくやれます」

「おい、かえでなにするんだ?」

一般隊士と同じようになにも知らされてないらしい平助くんがわたしに聞く。その後ろで左之さんも頷く。

「・・・今から」

わたしも言葉にゴクリ、吐息を飲む隊士たち。

「・・・大掃除を決行します!!」

「・・・ん?」

わたしの答えが意外だったのか、源さん以外のみんなは鳩が豆鉄砲を食らったように目丸くする。

「隊士部屋からの異臭が酷すぎます!このままなら体調不良になる隊士が続出するので大掃除して一回綺麗にします!そんでもってこの状態をできるだけ維持してもらい、ます!あ、既に局長からの許可はもらってるんで」

早口で言い切り、笑顔でみんなに視線を向ける。

わたしを止める人は、誰もいなかった。
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