危険な彼に焦がれて
「草薙さん、ありがとうございました」
「いや、礼を言われるようなことはしてねぇ。折川さんなら自分で片を付けられただろうからな。むしろ、余計なことをして悪かった」
そんな風に言われるとは思っていなかった。
余計なことなんて……
「余計なことだなんて思っていません。私油断していたので、本当に助かりました」
「あぁ、確かに頬に切り傷ができてるもんな。油断したからこそ、そうなったんだろう。若がその傷を見たら心配しそうだ」
心配……
こんな傷で……?
裏社会にいるのなら、怪我は当たり前だ。
こんな傷だったら、かすり傷にも入らない気がするけど。
「信じてねぇな。ふぅ、ま、後で夜来さんとこ行っとけ」
「分かりました」
行く必要はないと思ったけど、この場では頷いておいた。

