奈落の果てで、笑った君を。

浅葱の約束





「んなことがありえるわけねェだろ!!政権が朝廷に返った…?んじゃあ幕府は降伏したってことかよ!!」


「俺に言うなよ…!!家茂公が病死してから将軍の座は不在のまんま、俺だってワケわかんねえよ…、俺たちはこれからどうなるってんだ…?」


「薩摩と長州め…!!!いや、ちがう、あいつだ…、あの土佐の男がすべての引き金なんだろう」


「ああ。こうなっちまえば佐々木さんだって放ってはおかねえはずだ」



───慶應3年、11月。

幕府側に生きる者たちが何よりも恐れていた出来事が起こった。


とある男たちの働きで、朝廷が幕府から政権を奪い返したのだ。


誰もが信じてなどいなく、無謀だと思っていたからこそ実現されては波紋を生み、世の中はまた荒れる兆しだった。



「朱花、今日は帰りが遅くなる。他の隊士たちと一緒に寝てくれ」


「ジュンサツに行くの…?」


「今日だけは俺の部屋に入るな」



スパンッと、襖が閉められてしまった。


只三郎に呼ばれた会議から戻ってきた尚晴はわたしの質問に答えることもなく、そのまま部屋へと閉じ籠った。



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