クールで一途な後輩くんと同居してみた



「さすがに無頓着すぎます」



 あ……この雰囲気、知ってる。


 スイくんにお説教される前触れだ。


 同居初日はそういうお約束なのかな……。



「なにホイホイ出されたもの着てるんですか」

「え、ええ?」



 怒るところ、そこなんだ。


 スイくんが渡してきたものなのに、理不尽だ。


 今回のお説教は少し様子が違うような?



「こんな布一枚、何も隠せませんよ」

「そ、そうかな? 結構いい感じに……」

「隠れてません。ここ」



 スイくんの手が伸びてきて、手の甲が首に当たる。


 そのまま下に行くと、指先で鎖骨に到着した。



「……っん、」



 触れるか触れないか、絶妙な距離感。


 たまにツンと肌に触れてくすぐったい。



「ここも」



 今度は足。膝の、少し上。


 シャツの裾から内側に入るか入らないかくらいを攻められる。


 制服のスカートとそんなに長さは変わらないはずなのに。


 ぐわ、と熱がそこに集まった。



「……なんで怒らないんですか」

「っえ、?」

「気持ち悪い触れ方されてるんだから、気持ち悪いって言ってくださいよ」



 き、気持ち、悪い?


 そういうものなの? だって私……。


 スイくんから触ってもらえて、嬉しいな……って、思ったんだけど。



「え、と。スイくんなら、い、いいよ?」

「……っな、」

「う、うん……うん。スイくんだから、大丈夫」



 自分の中でもう一度考えてみるけど、やっぱりそれしか思い浮かばない。


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