見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
カランコロン…

「おっ、乃愛ちゃん!いらっしゃい!」

「こんばんはー」


公佳さんのお兄さんが出迎えてくれた。
うーん、近くで見ると筋肉ムキムキで背も高くて大きいなぁ。


「公佳と待ち合わせだよね、こっちで待っててね」

「はい、ありがとうございます」

促された席に着いてメニュー表を見てたんだけど。


「…あー、やっぱり可愛いなぁ…乃愛ちゃん、俺の嫁にならない?」

なぜかカウンターに戻らず、向かいの席に座ったお兄さんが頬杖をついて、私を正面に見ながらそんなことを言う。

「あはは、嫁、ですか?」

離婚したこと、公佳さんから聞いたのかな?

「うん、俺、すんごいかわいがっちゃうし毎日お姫様抱っこしてスクワットするし。それに絶対…悲しい思いもさせないから」

言葉はあれだけど、でも表情は至って真剣で…言葉に詰まってしまった。

「えっと…」


「お兄ちゃん?私がいない隙に、また言い寄ってるの?」

あ、公佳さんが来てくれた……ホッ


「あー公佳が来ちゃったよ、もっと話してたかったのになぁ、残念」

「もぅ…あ、私はいつもので。乃愛ちゃんは?」

「あ、私はプロテインのイチゴバニラでお願いします」

「はいよっ!乃愛ちゃん、またね!」

「あはは、はい」



さっきまでお兄さんがいた場所に公佳さんが座った。

「ほんっと兄がごめんね!何か言われた?」

「あ、…俺の嫁にならない?って。冗談だと思いますけどね、あはは」

「えぇ!?何それプロポーズ?」

「いえ、そういうんじゃないと思いますけど…」



少ししてお兄さんがドリンクを持ってやって来て言った。

「プロポーズなんだけどな」

「ちょっと、お兄ちゃん!何でまたそんなこと…」

「だってマジだもん、俺」

「お兄ちゃん…」

「乃愛ちゃんも考えておいてよ、ね」

「はっ、はぁ…」

そんな会話をしながらテーブルにドリンクが置かれた。

「いただきます」

運動してなくても、美味しくて普段から飲みたくなるなぁ。



「まずは、乃愛ちゃん、お疲れ様!そして離婚おめでとう」

「えへへ、ありがとうございます」

「離婚するの、渋らなかった?」

「あー…最初ごねてましたけど、青井さんが調停とか裁判とか説明したら、私の揺るがない決意がわかったみたいで、離婚届に書いてくれました」

「そっかぁ、さすが青井さん、やるね!きっとその言葉でイケると思ったのね。実は青井さんて事務所のスーパーエースなのよ」

「え、そんなにすごい方なんですか!」

「うん、絶対に乃愛ちゃんを勝たせたくて兄に相談したら兄も青井さんも快諾してくれたの」

「そうだったんですね…本当に私の知らないところで色々と便宜を図って下さって、本当にありがとうございました」

気持ちが体に伝わって、深々としたお辞儀になっちゃった。

「やだ、違うのよ、私がそうしたかっただけなの。何か自分が闘ってるみたいに思えちゃって。これはビシィっ!とスパーン!と勝ちたいな、ってね」
いつ見ても公佳さんのウインクは綺麗でかっこいいなぁ。うふふ。


それから、宏哉の職場での健闘を全て話すと、私の手を取って「頑張ったね!うん、よく頑張ったよ!」って涙ぐみながら言ってくれた。

「絶対に元旦那は後悔するわね、こんなに素敵な乃愛ちゃんを蔑ろにしたこと」

「ありがとうございます。さっきの青井さんのこともですけど、本当に公佳さんのお陰です。公佳さんが色々と助けて下さったから、私も自信が持てたし、ここまでできたんです」

「ううん、ぜーんぶ乃愛ちゃんが頑張った結果よ!だから本当に自信持っていいんだからね!」

「はい!…あ、それと、私これから引っ越しとかもあって色々と忙しくなりそうで、クラブも当分行けなさそうなんです…」

「…そうよね、離婚てエネルギーも必要で疲れるし、その後もやらなきゃいけない事とかもあるものね…。でも!5分10分でも時間が取れたらまたこうしてお茶しよう?大変なことがあれば手伝うし、辛いこととかあれば話も聞くからね!」

「ありがとうございます!…ほんとに公佳さんてお姉ちゃんみたい」

「ほんと?嬉しい!私も乃愛ちゃんを妹の様に思ってるからね。お姉ちゃんて呼んでもいいのよ?」

「あはは、じゃあお姉ちゃんて呼ぼうかな、なんて」

「うん!呼んで呼んで!」

そんな風に明るく言ってくれるから、その日は公佳さんの事を『お姉ちゃん』て呼ばせてもらって、久しぶりに楽しいひとときを過ごした。



それにしても、こんなに素敵な公佳さんがバツイチだなんて信じられないなぁ…

公佳さんから離婚を切り出したって、元旦那さんてどんな人だったんだろう…よほど悪い人だったのかな…

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