見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
ん……少し明るい……朝?今…何時…?
でもまだ眠い……寝てたいな……
暖かいお布団から出られない……

頭から布団を被り、目も開けずに布団の中でもぞもぞしてると何かに手が当たった。


……ん…?……あれ?

……いる……


潜ったばかりの布団からヒョコっと頭を出すと、隣で手枕しながら優しい眼差しで私を見る伊織さんがいた。

「おはよ、乃愛」

「お、はよう……あれ?」

「夜中、毛布掛けてくれてありがとな」

「あ、いえ……あれから起きたんですか?」

「うん、風呂入ってこっち来た」

「そうなんですね…」


「つーかさ、起こせよっ」

「え?…ひゃっ!」
いきなり布団の中で抱き締め…いや、抱きかかえられた。

「俺一人で寝かしとくな!一緒に寝たいんだからー!」
今度は抱きかかえられたまま、ごろりごろりと左右に揺らされた。

「でっでも、気持ちよさそうに寝てたから…起こしたら悪いと思って」

「一人で寝かしとく方がよっぽど悪ぃわ!じゃあ…乃愛は一人で寝る方がいいの?俺と一緒より」

「そんなの…伊織さんと一緒の方がいいに決まってます!」

そう言いきると、伊織さんが笑った。

「ふ、よかった」

そして、優しく抱き締められた。


「伊織さん…」

「ね…俺に敬語使うの…やめて?あと、伊織、って呼んでよ。伊織さん、じゃなくて」

「え…」

「呼んで、伊織、って」

どこか…すがるような目。
…もしかして、まだ不安なのかな…

あ…昨日の宏哉とのやり取りを見て、私の敬語が他人行儀に感じたのかも。

…そんなのはイヤ。
伊織さんを…いえ、伊織を悲しませたくない。

だから…

「…伊織」と、伊織の目を見て、呼んだ。

「ん、なぁに?乃愛」
あ、嬉しそう。

「私、伊織だけを愛してるから。伊織が大好きで、伊織しか見えてないからね」
何度も愛しい人の名前を呼んだ。

「乃愛……すげぇ嬉し……」

ホッとしたように呟いて、私をぎゅうっと抱き締めた。
「俺……昨日、実際に乃愛の元旦那を見たのもあって…乃愛とアイツが長い付き合いだってことに不安になってたんだ…」

「うん……」

「俺…誰ともあまり年単位で長く付き合ったことなくて…公佳にしたってそんなに長くないからさ、付き合いも結婚も。…だからその長い付き合いの絆ってのがわからなくて…余計に…俺にはない関係性に…俺は負けんじゃないか、って…」

「ん……」

私は伊織の不安を払拭したくて、伊織をきゅうっと抱き締めた。

「でも…乃愛は俺を選んでくれたんだよな」

「そうだよ。私は伊織が好きなの」


「それで…アイツは大丈夫なのか?」

「ん……昨日、宏哉と話をさせてくれてありがとう。おかげで…お互いに思ってることを言いきれたと思う。それで…宏哉からたくさん気持ちを伝えられたけど…やっぱり私はよりを戻すことは無理だと思ったの」

「…何で?」

「一番の理由は、私は伊織が好きだから。…でもね、もし伊織とお付き合いしていなかったとしても、私は宏哉と一緒にはいられないと思ったの。…きっと思い出してしまうから…」

「そうだよな…目の当たりにした事実はそう簡単に忘れることはできないよな」

「うん…そこにお互いの愛とか気持ちがなかったとしても…裏切られたのは事実だし、私はそこまで物分かりのいい女じゃないし…割り切ることもできないから。もしやり直したとしても…思い出して一緒にいるのが辛くなると思う。それもきちんと話した」

「うん」

「そしたら宏哉もわかってくれた。自分がそうさせたんだからしょうがないって」

「そっか…彼も辛いだろうけど、仕方ないよな」

「あ、そういえば、伊織のことカッコいい大人だって言ってたよ」

「え、俺?」

「うん。宏哉が、今の俺には敵わない相手だ、って」

「そっか。じゃあずっと敵わない相手でいないとな」

「ふふ、いくら宏哉が頑張ったとしても、私はずっと伊織しか見てないからね」

「乃愛…ありがとな」


「じゃ、そろそろ起きよっか、今何時かな…」

きっともういい時間になってるよね。
そう思って布団を捲って体を起こした。
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