無口な彼の素顔〜職人技に隠された秘密〜
 優と出会ったマンションのリノベーション現場はすでに終わった慎は、今は別の現場にいる。

 現場のマンションの一室に入るやいなや、慎の怒号が聞こえてきた。

「てめえ。適当なことをするな」
「す、すみません」

 若手の大工が怒られている。見慣れた光景だ。

「慎さん」
「おう、瑛斗。いいところに来た。手伝え」
「そのつもりです。その前に見てもらいたい物が」
「なんだ?」
「慎さんにお願いしたい現場の図面です」
「どれ」
 
 慎は、図面を受け取り隅々まで目を通す。

「えらく広い物件だな」
「そうですね。うちが今建ててるマンションの最上階です」
「新築物件のプランを優ちゃんに依頼したのか?」
「……。なんで?」

 何も言っていないが慎にはわかるらしい……。
 
「どう見ても、優ちゃんらしいプランだ。おたくのプランナーとは全く違う」
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