【一気読み改訂版】黒煙のレクイエム
第71話
アタシは、ひろつぐの家が全滅した事件から1年の間は名古屋でバイト生活を続けた。

その後は、関東甲信越から東北の各都市を放浪する日々がつづいた。

生まれた時から放浪癖《ほうろうへき》があるので、ひとつの街に定住することができない…

今までに離婚と再婚を何回繰り返したのか…

よく覚えてない…

2011年に発生した東日本大震災による巨大津波で、当時暮らしていた鹿折《ししおり》(宮城県気仙沼市)の街が壊滅したので、帰るふるさとがない…

アタシは、あの日から20年の間各地を転々とする暮らしを続けたので、ショウシンショウメイのやさぐれた女になった。

メイクもドレスもランジェリーも派手な色ばかりを好むようになった…

お酒は、アルコール度がめちゃめちゃ高いお酒ばかりを好むようになった…

ものすごく恐ろしい絵柄《がら》の刺青《すみ》を彫った…

アタシは、すっかり変わり果てた…

そしてアタシは、36歳になった。

東日本大震災が発生したあの日から20年が経過した。

しかし、アタシは今も乳房《むね》の奥にできた深い傷を抱えていた。

時は流れて…2031年7月頃であった。

アタシは、2030年の秋に知人から『仙台にいい働き口があるけど、行ってみる?』と言われたので言、仙台に移住した。

仙台に移住したアタシは、市内にあるナイトクラブやスナックバーや風俗店などを転々としてお金を稼いだ。

アタシの人生の転機は、2031年7月7日・七夕の日におとずれた。

(仙台の七夕祭りは8月だけどね…)

場所は、市内一番町にマダムズバーにて…

アタシは、ここでホステスをしていた。

この時、大船渡市からお越しになられた70代の男性6人のグループが来店した。

「あら、いらっしゃーい。」
「久しぶりだね。」

男性客6人のグループは、店の奥のボックス席に座った。

しばらくして、ボックス席にアタシと8人のホステスさんが座った。

男性客6人のグループは、大船渡市三陸町泊の漁師仲間さんたちである。

アタシは、グループの中で一番年上の82歳の男性客に水割りを作った。

その時、男性客はアタシに『お姉ちゃんは、結婚はしていないの?』と優しい声で聞いた。

アタシは気乗りしない声で『えっ…結婚?まだですが…』と答えた。

男性は『ちょうどよかった…うちの次男がまだお嫁さんがいないのだよ…40過ぎてもまだ一人身なのだよ…うちにお嫁に来てくれるかな…』と言うた。

アタシは『お酒に酔おてはるけん、そん名のウソにきまってる。』と思って聞き流した。

けど、あとになって男性客の話はほんとうだったと気づいた時には、あとのまつりだった…

そう言うことで、アタシは三陸町泊で暮らしている82歳の男性の次男さん(42歳・JF職員)と再婚することになった。

アタシは、再婚したけど婚姻届は出さなかった。

2031年7月10日に、アタシは三陸町に移った。

アタシは、婚姻届を出さずに新しいダンナと結婚生活を始めた。

その時、新たな悲劇の幕があがった。
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