クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ

17.許嫁の許嫁 side.A



黒塗りの高級車に黒服のSPを従え、ゆっくりと車から降りる白髪の和服のおばあさん。
じいちゃんより上の年齢のはずだけど、腰は曲がっていない。

髪も化粧も綺麗に整えられ、その凛とした佇まいは何も寄せ付けないといったオーラを感じる。

虹ヶ崎財閥会長夫人である大伯母に会ったのは、子どもの時以来だけど、子どもながらに感じた言いようのない畏怖は今も変わらずだった。


「これはこれは姉上、わざわざご足労いただいてすまないな」

「弟の見舞いにくらい参りますわ」


じいちゃんと大伯母の間には、ピリピリとした空気が漂っている。

この空気の中に晒されるくらいなら、24時間ぶっ通しで稽古しろって言われる方がマシ。
はあ……早く帰ってくれないかな。


「あら、青人さん。お元気にしていたかしら」

「…ご無沙汰しています、伯母さん」


俺以上に気が重いと思っているのは父さんだと思うけど、絶対に顔には出さないようにしている。

大伯母はチラリと隣の母さんに視線を移す。


「二人目を授かったそうですね…おめでとう」

「ありがとうございます」


母さんはにこやかに、そして恭しくお辞儀した。


「青人さんがもう少し早く教えてくだされば、もっと早くにお祝いできましたのに」

「すみません。お忙しい伯母さんのお手を煩わせるわけにはいかないと思いまして…」

「かわいい甥のお祝いくらい、いくらでも致しますわ」


……なんでだろう、言っている言葉は優しいはずなのに、全く気持ちが込もっているように感じられないのは。

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