クールな許嫁の甘い独り占め。Ⅱ


それから蒼永がまだ戻ってきそうにないので、ちまちま料理をつつきながら待っていた。

蒼永が青人さんと長電話なんて、珍しいなぁ。
料理冷めちゃうよ?


「ごめん、待たせて」

「ううん、大丈夫?何かあった?」

「大丈夫…」

「そう……?」


でも蒼永、明らかにさっきよりも顔色が悪い気がするんだけど……もしかして、


「おじいさまに何かあったとか!?」

「え?じいちゃんは元気だよ。
むしろちょっと休んで欲しいくらい」

「そうなんだ」


じゃあ、何があったんだろう……?

私には話せないことなのかな。
お家のことなら私が口出すことじゃないと思うけど、ちょっと寂しいな……。


「……咲玖」

「は、はい」


何だかちょっと改まったみたいな雰囲気に、思わず私も背筋を伸ばす。


「実はその、じいちゃんの見舞いに親戚がくることになって。
だから今日は実家に帰ってくれる?」

「えっあ、そうなんだ…わかった」

「ごめん。もしかしたら、しばらく会えないかも」

「そ、そっか……」


仕方ないよね、と思いつつも寂しくて仕方なくて、喉を通る料理が冷たく感じる。

しばらくっていつまで?

そう聞きたいけど、上手く口に出せない。


「っ、仕方ないよ!その分今日は最後まで楽しもうね!」

「うん」


蒼永の前では笑ってみせたけど、精一杯の強がりだった。

楽しい音楽とともにライトアップされたパレードはとても綺麗だったけど、夜空の中で輝く光が眩しくて、少し切なくも感じた。


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