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無理やり笑みを浮かべて静音が一に何度も「おめでとう」と言うと、一は照れ臭そうに頭をガシガシと乱暴にかきながら、静音が訊いていないのにいつから芽衣を好きなのか、どこでどんな風に告白したのかを話し始める。

「好きだって自覚したのは、高一終わりの体育の授業だったな〜。その日、男子はサッカーで女子はテニスでさ、サッカーの試合中にボールが俺の顔面に当たって鼻血出たの。そしたら、友達とかより先に芽衣が駆け付けてさ。保健室まで送ってくれたんだ〜」

その日、静音は風邪を引いて休んでいた。その日にもしも静音が学校にいたのなら、この未来は違っていたのかもしれないと思ってしまう。

「ちょっとずつ話しかけるようにして、この前の放課後一緒に文化祭準備の買い出しに行った時に、我慢できなくてつい「好きです」って告った。声震えてて、超俺ダサかったわ〜」

告白のシーンを思い出したのだろう。一の顔はまるでリンゴのように赤くなっている。静音が十年以上そばにいて見たことのない表情だ。
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