愛が芽生える刻 ~リラの花のおまじない~

祖父の死

その知らせは突然届いた。

エルマーが今日も変わらず王城で仕事をしていると、
急報が実家から届く。
全速力で馬を飛ばしてきたのだろう。
配達人も息が上がっている。

嫌な予感というのは的中するものだ。
配達人から受け取った電報には、
祖父が危篤状態にあることが簡潔に記されていた。
前にあった時はあんなに元気そうだったのに何でだ、という思いがエルマーを駆け巡る。
ユリウスに祖父の危篤を伝えると、
自分も一刻も早く向かうというので、
急いで準備をして城を発った。

通常であればシュトラウス家の領地までは馬車で1日はかかる。
しかし今回はそんな悠長なことは言ってられない。
騎士団から最も脚の速い軍馬を2頭借りて、
ユリウスと2人全速力でシュトラウス家を目指した。
馬の頑張りもあって、朝に出発して夕方には到着することが出来た。
慌ただしく屋敷に入ると、祖父が眠る寝室に入る。
「爺ちゃん、帰ったよ。」
ベット脇で眠る祖父に優しく話しかけると、ヨーゼフはうっすらと目を開けてエルマーを見つめる。
「エルマーか。来てくれたのか。」
「うん。国王陛下も来てくれたんだよ。」
エルマーと入れ替わるように、ユリウスはベット脇に座ると
ヨーゼフのやせ細った手を握る。
「じぃ、私だ。分かるか。」
ユリウスの問いかけに涙を流しながら、ヨーゼフは頷く。
「こんな老いぼれのために、ご足労いただき感激です。」
< 8 / 58 >

この作品をシェア

pagetop