政略結婚は純愛のように〜子育て編〜
「謝る必要はない。そのまま一緒に寝てしまっていいんだからな」
 
彼はそう言って、夕食のスープをかき混ぜている。
 
実際そういう日も少なくはない。由梨自身、出産でダメージを受けている身体で少しも目が離せない沙羅優先の生活なのだ。

彼女に合わせて寝られる時に寝ているようにと、厳命されている。

「起こしてしまったんだったらごめん」
 
隆之が言った。
 
彼が帰ってきたことに由梨が気がつかなかったのは、彼が意識して静かに家に入ってきたからだ。

この時間、沙羅を寝かしつけていることが多い由梨の邪魔にならないように。
 
それはとてもありがたいけれど、一日中働いて疲れて帰ってきた彼を出迎えられないのが申し訳なかった。

由梨にとっても一日のうちで大好きな瞬間だったのに。
 
なにもかもがガラリと変わったふたりの生活、戸惑うことだらけだけれど、それを凌駕する喜びに包まれていることも事実で……。

「夕食は、私がやりますから隆之さんは着替えてきてください」
< 2 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop