政略結婚は純愛のように〜子育て編〜
その2 違和感
由梨が風呂から上がると、隆之はリビングにいた。ソファに座り、携帯の画面をジッと見ている。
いつになく表情が険しかった。由梨が入ってきたことにも気づかずに、眉を寄せて考え込んでいる。
その姿に、由梨は声をかけることもできずに足を止めて彼を見つめた。
しばらくすると彼は携帯をセンターテーブルに置き、ふーと息を吐いてソファに身を沈める。背もたれに置かれた右手の人差し指がソファをトントンと叩いていた。
会社でなにかあったのだ、と由梨は思う。
彼が家庭に仕事を持ち込むことはほとんどない。家にいる時は常に穏やかに沙羅を慈しむ父親の顔だ。
外での激務を思わせるような振る舞いもあまりなかった。でも一歩外へ出れば、重要な決断を迫られる立場にいるのは確かなのだ。
家に帰ってきたからといって、すぐに頭が切り替わらない日もあるのだろう。
せめて家にいる時くらいは、難しいことから解放されてリラックスしてもらいたいと心から思う。
由梨にできることは、本当に少ししかないけれど。
「お風呂、ありがとうございました。隆之さんもどうぞ」
遠慮がちに声をかけると、彼は由梨の方を向き、穏やかに微笑んだ。
「ああ、ありがとう」
そして少し首を傾げて、由梨に向かって問いかけた。
いつになく表情が険しかった。由梨が入ってきたことにも気づかずに、眉を寄せて考え込んでいる。
その姿に、由梨は声をかけることもできずに足を止めて彼を見つめた。
しばらくすると彼は携帯をセンターテーブルに置き、ふーと息を吐いてソファに身を沈める。背もたれに置かれた右手の人差し指がソファをトントンと叩いていた。
会社でなにかあったのだ、と由梨は思う。
彼が家庭に仕事を持ち込むことはほとんどない。家にいる時は常に穏やかに沙羅を慈しむ父親の顔だ。
外での激務を思わせるような振る舞いもあまりなかった。でも一歩外へ出れば、重要な決断を迫られる立場にいるのは確かなのだ。
家に帰ってきたからといって、すぐに頭が切り替わらない日もあるのだろう。
せめて家にいる時くらいは、難しいことから解放されてリラックスしてもらいたいと心から思う。
由梨にできることは、本当に少ししかないけれど。
「お風呂、ありがとうございました。隆之さんもどうぞ」
遠慮がちに声をかけると、彼は由梨の方を向き、穏やかに微笑んだ。
「ああ、ありがとう」
そして少し首を傾げて、由梨に向かって問いかけた。