さくらの記憶
第十七章 二人の想い
「ただいまー」

マンションに着き、さくらは鞄を置いてベッドに腰掛ける。

ふうとひと息つくと、急に北斗のことを思い出した。

(そうだ!北斗さん。元気そうで良かった。もう傷はすっかり治ったのかしら)

最後にメッセージのやり取りをしたのは、確か3日前だった。

その時には、東京に来るなんて話、してなかったなあと思いながら、さくらはメッセージを送ってみる。

『今、帰宅しました。北斗さん、元気そうで良かったです』

すぐに既読になる。
と、次の瞬間着信のメロディが鳴り始めた。

「え、で、電話?北斗さんから?」

一瞬ためらってから、通話ボタンをタップする。

「も、もしもし?」
「さくら?!俺のこと、覚えてたのか?」

いきなり飛び込んできた北斗の切羽詰まった声に、戸惑いながら返事をする。

「え?はい、覚えてますけど…」
「じゃあ、なんでそう言わなかった?!」
「はい?だって、仕事の席だから、北斗さん、他人のフリしてるのかなって思って…」
「何言ってんだ!俺が、どれだけ…」

そこまで言うと、声を詰まらせる。

「ほ、北斗さん?どうかしたの?」
「さくら、今どこだ?」
「え?おうちですけど…」
「すぐ行く!住所は?」
「え、ええ?ここに来るの?今から?」
「早く!住所は?」

さくらが答えると、待ってろ!と言って電話は切れた。
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