さくらの記憶
第十八章 選んだ道
「さくら、昨日はごめんね。大変だったでしょ?」

翌朝、元気になって出勤してきた遥に両手を合わせて謝られ、さくらは、ううんと首を振った。

「大丈夫だったよ。それより遥こそ、もう体調平気なの?」
「うん。一日ぐっすり寝たら熱も下がったし。今日からまたバリバリ働くね!」

二人して、受付のカウンターで準備を始める。

「ん?ちょっと待って、さくら!」

急に手を止めて遥が声をかけてきた。

「どうしたの?」
「そ、それなに?どういうこと?」

遥は目を見開いて、さくらの左手を指差している。

「あ、これ?えっとね…」
「さくら、分かってる?左手の薬指に指輪をはめるって意味。やめてよ?自分で買ったのー、とかいう天然発言」
「うん、違うよ。これは、大事な人にもらったの。プロポーズの言葉と一緒に」

ヒーー!と、遥は後ろに倒れそうなほど驚く。

「大丈夫?遥」
「だめ、熱がぶり返しそう…」
「え、無理しないで。今日も帰って休んだら?」
「ううん、だめよ。さくらから詳しく聞くまでは帰れない!さくら、仕事終わったら晩ごはん一緒に行くわよ!」

遥の勢いに呑まれ、さくらは頷くしかなかった。
< 112 / 136 >

この作品をシェア

pagetop