さくらの記憶
お風呂に入り、寝る準備も済ませたさくらは、部屋で明日のスケジュールを確認していた。

すると、ベッドの横のドアがコンコンとノックされる。

「はい。北斗さん?」
「うん。さくら、ちょっといい?」

さくらがドアを開けると、風呂上がりらしい北斗が、こっちでお茶でも飲まない?と、親指で中を差す。

頷いてさくらが部屋に入った途端、北斗はいきなりさくらを抱きしめた。

「わ!ちょっと、北斗さん?お茶は?」
「お茶なんかどうでもいい」
「は?お茶飲まないって誘ったのは北斗さんでしょ?!」
「さくら!誘われたからって、すぐに部屋に入るな!」

はいー?と、さくらは眉間にしわを寄せる。

「ど、どうしたの?北斗さん。言ってることが支離滅裂なんだけど」
「さくらが悪いんだぞ!俺をこんなに嫉妬させて。もうどこへも行かせたくない。あいつと一緒に帰らせたくない!」
「あいつって…。栗林さんのこと?」

さくらがそう言った途端、北斗は唇を奪うように強引にさくらにキスをした。

「ん、北斗さん、ちょっと!」

さくらが驚いて身をよじるも、北斗はさくらを抱く腕を緩めず、そのままベッドに押し倒した。

背中から倒れ込んださくらは、顔すれすれの距離で北斗に見つめられ、思わず息を呑む。

いつもの優しい眼差しではなく、余裕のない、ギラッとした男の色気を感じさせる瞳。

「北斗さ…」

話そうとしても、また唇を奪われる。

まるで抑えられない気持ちをぶつけるように、北斗はさくらに何度もキスをする。

「さくら、俺だけのさくら。誰にも渡さない」

呟きながらキスをし、ギュッと抱きしめる。

さくらは、まるで嵐のような北斗の激情を感じながら、たくさんのキスを浴びた。
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