さくらの記憶
第十九章 桜の季節
東京では、桜の開花が発表された3月下旬。
さくらは満を持して会社を退職した。

「さくらちゃん、本当にありがとう!」

大きな花束を栗林が手渡し、部署のメンバーも拍手を送る。

「ありがとうございます。短い間でしたが、本当にお世話になりました。プロジェクトには、引き続き関わらせて頂きますので、どうぞよろしくお願い致します」

さくらは、深々と頭を下げる。

「これからはさくらちゃん、神代さんになるのかあ」
「よっ、社長夫人!」
「どうしよう。今度からなんて会話すればいいんだ?ご機嫌麗しゅう、とか?」

男性陣が口々に言い、さくらは慌てて手を振る。

「そんな!これまで通りでお願いします。私、名字は変わりますが人格は変わりませんので」

栗林が、笑い出す。

「そうだよな。さくらちゃんなら、きっとどこへ行ってもさくらちゃんのままだよ。これからも、よろしく頼むな」
「はい!」

さくらは、輝くような笑顔をみせた。
< 127 / 136 >

この作品をシェア

pagetop