さくらの記憶
深夜になっても、北斗は自分の部屋のデスクで1人、物思いにふけっていた。

ベッドの横の、隣の部屋に繋がるドアを見る。

このドアの向こうで、今、さくらが眠っている。

信じられないという思い、なぜ?という疑問、そしてこれからどうなるのかという不安…

色々なことが頭を駆け巡る。

だが、そのわずかな隙間に、もう一度会えたことの喜びが込み上げてきそうになり、北斗は強く頭を振った。

(明日、彼女を病院に連れて行く。俺のやるべきことはそれだけだ。大丈夫、5年前のような、辛い別れにはならないはずだ。今なら、まだ…)

あの時の、胸が張り裂けそうな気持ちと、泣いてすがるさくらの顔を思い出し、北斗はギュッと唇を噛みしめた。
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