さくらの記憶
しばらく二人で立ち話していると、やがて後ろから北斗の声がした。

「二人ともここにいたのか。そんな所で立ってないで、こっちでお茶でも飲んだら?」

さくらは、北斗を振り返って、あれ?と考え込む。

「どうかした?」
「ええ、あの、そこってこんな感じでした?確か、縁側だったような…」

5年前、縁側に座って夜に桜の木を眺めたのを覚えている。

だが今、北斗が立っている所はウッドデッキになっていて、丸いテーブルや小さな木の椅子も置かれていた。

「ああ、そうなんだ。あの火事で焼けたあと、建て直してね。その時にリビングを広げて、奥の和室だった所をサンルームにしたんだ。そこからこのウッドデッキに出られる」
「へえ、素敵!」

さくらは、早速庭からの階段を使ってウッドデッキに上がってみた。

「ほら、ここに座って」

北斗が椅子を勧めてくれる。

「わあ!桜の木が凄く綺麗に見える。特等席!」

さくらは感激して北斗に笑いかける。

北斗も、さくらの笑顔にふっと頬を緩めた。
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